ヘシオドス 『仕事と日々』

講読の時間に用意した私の試みの訳です。

序歌(l1-10 )

 1 ピエリエー山のムーサたちよ、歌によって祝歌を歌う者たちよ、
 2ここに来たまえ、あなた方の父たるゼウスをほめたたえ歌いたまえ、
 3死すべき人間たちが世の人々の口に上るも上らぬも彼ゼウスによる
 4有名か有名でないかも大いなるゼウスの心によるのだ。
 5すなわち彼はやすやすと強くし、やすやすと強くある者を押しつぶす、
 6またやすやすと目立つ者を弱め目立たぬ者を強める、
 7またやすやすと曲がった者を正し傲慢な者をしぼませる
 8とても高い所に住むゼウスは天で雷を鳴らす。
 9見て聞いて聞き届けたまえ、そして正義によって裁きを正したまえ
10あなたは、そして私はペルセースに真実を物語りたいと思う。

二種のエリス(11-46)

11 さてエリスの種類は唯一ならず、地上には二つの種類がある、
12一方はそれを目にする者がほめるであろうものだが、
13もう一方のものは咎められるべきものである、それらは分かれた心を持っている
14すなわち一方は悪しき戦争と戦闘を増長させる、
15ひどいものである、死すべきものは誰もそれを愛しはしないが、
16不死なる者たちの計りによって止むを得ず苛酷なる方のエリスを尊ぶ。
17もう一方のエリスは長女として暗きニュクスが産んだもの、
18天に住む高い座にすわるクロノスの子がこのエリスを据えた
19大地の根に、そして人間たちにとってはるかにより善きものとして、
20それは救いようのないものでさえも仕事へと起こして向かわせる。
21すなわち仕事を怠けている人も余所の金持ちが
22熱心に耕し植え良く家を整えているのを見ると、仕事へ向かう、
23富に対して熱意を示す人の隣人はねたむものである、
24これが死すべき人々にとって善いエリスである。
25陶工は陶工に、大工は大工に悪意を抱き
26乞食は乞食を、歌手は歌手をねたむものである。
27 さあペルセースよ、お前はそれらのことをお前の心のうちにとどめよ、
28悪事に喜ぶエリスがお前の心を仕事から引き離させないようにせよ
29争いを見て法廷に注意を向けていて。
30というのは争いや法廷事への気遣いは僅かでなければならない、
31大地がもたらす生活の糧、デーメーテールのもたらす穀物を
32豊富に時宜を得て蓄えてはいない者にとっては。
33もしお前が穀物に満ち足りているなら、法廷論争や争いを増大させられよう
34他人の持ち物を賭けて。だがお前には二度と
35その様にすることは出来ないのだ、さあ直ちに法廷論争を決着させようではないか
36正しい裁きによって、ゼウスからもたらされるそれは最善である。
37というのは以前に我々は土地を分けたが、お前は別の多くを
38つかみ持っていった、賄賂をむさぼる王たちに
39取り入って、この裁きを下そうとしている者たちに、
40愚かな者たちに、どれほど半分が全部より多いか彼等は知らないし、
41ゼニアオイやアスフォデルにどれほど大きな人を強くする手段があるのか知らない。
42というのは神々は人間たちにとっての生活の糧を隠してしまったからである、
43さもなくば容易にお前はたった一日働けば
44一年間蓄えを持って仕事をせずにいられたであろう、
45すると直ちに舵を炉の煙の上にしまうであろうし、
46牛や重労働に耐えるラバたちの耕した土地も無くなってしまうであろう。

プロメーテウスとパンドーラ(47-105)

47 しかしゼウスは隠したのだった、心怒りにかられて、
48悪知恵にたけたプロメーテウスが彼をだましたので。
49そのために人間たちに苛酷な心配を仕掛けたのだ、
50つまり火を隠した、それをまたイアペトスの善き息子が
51人間たちのために賢きゼウスの所から
52虚ろなウイキョウの内に隠して盗んだ、雷に喜ぶゼウスの目を逃れて。
53彼を怒って雲を集めるゼウスは言った、
54 「イアペトスの子よ、あらゆることに関して知を弁えたものよ、
55火を盗み私の心をだましてお前は喜々としているが、
56それはお前自身にとっても後に生まれてくる人間たちにとっても大きな災いのもととなろう。
57彼等に私は火の代わりに悪を与えよう、人間たちは皆
58己の悪を抱きつつ、心中喜々としよう。」
59 こう言うと人間たちと神々の父は大笑いした。
60そして有名なヘーパイストスに命じて直ちに
61土を水に混ぜ、その中に人間の声と力を置き
62顔は不死なる女神に似せ、
63愛らしい美しい乙女の姿を作らせた、さらにアテーネーに
64とても手の込んだ糸を編むという、仕事を教えさせた、
65そして黄金のアフロディーテーには頭の周りに誉れ、
66厄介な欲求と四肢をむしばむ心配を注がせ、
67犬の心と盗癖を植え付けるよう
68アルゴス殺しの伝令ヘルメイエーに命じた。
69 こう言うと、神々はクロノスの子たる王ゼウスに従った。
70そして直ちに土から有名な両足の曲がった神は
71敬うべき乙女に似せたものをクロノスの子の意思によって形づくった、
72そして瞳輝く女神アテーネーは帯をつけて飾ってやった。
73その周りに女神カリスたちと崇められるペイトーは
74黄金の首飾りを肌に掛け、頭の周りには
75髪の美しいホーラたちが春の花で作った冠を置いた、
76彼女の肌にあらゆる飾りをパラス・アテーネーがつけた。
77またその胸の内にアルゴス殺しの伝令は
78偽りと欺きの言葉、盗癖を
79雷轟かせるゼウスの意思によりこしらえた、そしてそれのうちに声を
80神々の伝令は置き、その女をパンドーレーと名づけた、
81というのはオリュンポスに館を持つものが皆
82贈物として、すなわちあくせく働く人間たちにとっての災いとして与えたからである。
83 さてこんな手のつけられない罠を仕上げると、
84エピメーテウスのもとへ父は有名なアルゴス殺しの神、足の早い神々の使者に
85贈物を運ばせて送った、エピメーテウスは
86拒まなかった、彼にプロメーテウスは決してオリュンポスのゼウスからの
87贈物を受け取らず、反対に送り返すように言ってあったのに、
88死すべきものたちにとっての何か悪いことにならないようにと。
89しかし彼は受け取って、すでに悪を手にした時にわかった。
90 すなわちそれ以前は地上の人間たちの種族は
91災いから離れ厳しい労働なしに
92また人間たちに死をもたらす苦しい病気もなしに生きていた、
94だが女は両手で瓶の大蓋を取り去って
95まき散らした、そして人間たちにとっての厳しい困難を仕掛けたのだ。
96だが底にはエルピスだけが壊されない家の中
97瓶の内側の縁の下に止まっていた、そして外には
98飛び出さなかった、というのはそうなる前に瓶の蓋を乗せたから
99アイギスを持つ雲を集めるゼウスの意思によって。
00だが無数の害悪が人間たちの下にうろつくこととなった、
01実に大地も海も悪に満ちているのだ、
02病は人間たちに昼も、夜も
03ひとりでに死すべきものたちの下に運ばれてあししげく訪れる
04音も立てずに、声を知弁えたるゼウスが取り上げたので。
05かように如何にしてもゼウスの意思を逃れることは出来ないのである。

五時代の神話(106-201)

06もしお前が望むなら、私は別の話を話すことにしよう、かいつまんで、
07うまく上手に、だからお前はお前の心に刻んでおけ、
08同じ起源から神々と死すべき人間たちは生まれたということを。
09 最初に声を区切って話す人間たちの黄金の種族を
10オリュンポスに館を持つ不死の者たちが作った。
11彼等はクロノスの時代、すなわちクロノスが天で王位についていた時代の人々だった
12彼等は神々として生きていた、憂い無き心を持ち、
13労苦と悲しみとは無縁であった、悲惨な老年も
14全く訪れる事なく、永遠に足も手も同じで
15あらゆる悪の外にて大騒ぎの中で楽しんでいた、
16死ぬときには眠るように亡くなっていった、あらゆるものが
17彼等にとって善かった、実りをもたらす耕地は
18ひとりでにたくさん惜しみ無くもたらしていた、人々は自らすすんで
19静かに多くの良き人々と仕事を分け持っていた。
20(羊に恵まれ、至福の神々にも愛されていた)
21しかしその種族を大地の下に隠した後に、
22彼等は大いなるゼウスの計らいによりダイモーンたちになる
23善い、地上の、死すべき人間たちの守り手として、
24(彼等は裁きと非道を監視する
25霧を纏ってここかしこと地上をうろついて)
26富の与え手として、そしてそうした王族の特権を彼等は持っていた。
27 さらに第二番目のはるかに劣る
28銀の種族を作った、オリュンポスに館を持つ者たちは、
29彼等は姿も考えも金の種族に似ていなかった。
30だが彼等は100年間子供として優しい母の元
31大きな子供として家の中ではしゃぎ回って育てられていた、
32しかしやがて成長し青年の域に達するや、
33短い生涯を送るものだった、考えのなさ故に
34災いを得て、というのも向こう見ずな傲慢を
35互いに抑えられず、そうすることが人間たちには習慣に従って掟であるところの、
36不死なるものたちの世話をしようともせず、聖なる者たちのために
37至福の神々の祭壇に犠牲を捧げようともしなかった。そこで彼等を
38怒ったクロノスの子ゼウスは隠したのであった、敬意を
39彼等がオリュンポスに座を占める至福の神々に払わなかったために。
40しかしその種族を大地が隠した後に
41彼等は地下に住むものとして至福の死すべきものたちと呼ばれた、
42第二番目のものたちではあったが、それにも拘らず名誉は彼等にも付いていた。
43 さらに父なるゼウスは声を区切って話す人間たちの第三番目の種族として
44青銅の種族を作った、これは銀の種族とは全く似ていず、
45トネリコの木から作られたもので、恐ろしくて力が強く、アレスの
46呻き声をあげさせる業と暴力とを彼等は職としていた、そして穀物を全く
47食べず、鋼鉄の強い心を持っていた、
48近付く事すら出来ぬ者たちで、力強大で触れ得ぬ腕が
49肩から強靭な体に生えていた。
50彼等の武器は青銅製で、家も青銅で出来ていたし、
51青銅で耕作していた、黒い鉄はまだなかったのである。
52そして彼等自身の腕によって殺されて
53身も凍るハデスの湿っぽい館へ下って行った
54名も知れずに、黒い死が実に乱暴である彼等をも捕らえた、
55太陽の輝く光りを後にして。
56 しかしその種族をも大地の下に隠してしまうと
57再びなを別の第四の種族を皆を養う大地の上に
58クロノスの子ゼウスは作った、より正しく、より善く、
59人たる英雄たちの神のごとき種族、半神と呼ばれる種族で
60限り無き大地の上なる我々に先立つ者であった。
61彼等のある者たちを悪しき戦争と戦いの恐ろしい轟音が
62またある者たちをカドモスの地、七つの門があるテーベーの城下で、
63オイディプスの羊のために戦い滅ぼされた、
64またある者たちを船に乗って大きな海の深みを越えて
65トロイエーに髪麗しきヘレネーのために連れて行かれた。
66その地である者たちを死の終末が包み込んだが、
67ある者たちには人間たちから離れて生活の糧と住家を与え
68クロノスの子父なるゼウスは大地の涯に住まわせたので、
70彼等は憂い無き心を持って住んでいるのだ
71深く渦巻くオーケアノスの近く幸福者たちの島に、
72彼等は幸福な英雄たちである、彼等のために蜜のように甘い熟した実を
73年に三度穀物を与える耕地がもたらすのである。
 a不死なる者たちから遠く離れて、彼等にはクロノスが君臨していた。
 b・・・というのは人々と神々の父がいましめを解いたから、
 cしかし今は人々からしかるべき尊敬を受けている、
 dそしてゼウスは声を区切って話す人間たちの別の種族を作った、
 e今・・・に生きているところの・・・・
74 こうして最早私は第五番目の人間たちと共にいたくはなかったのだ
75むしろその前に死ぬかその後に生まれたいのだ。
76すなわち現在は鉄の種族の時代である、昼も
77夜も労苦と苦悩に押し潰されて止むことはない、
78つらい心労を神々は与えるであろう。
79しかしとはいっても悪に善が混じることもあろう。
80だがゼウスは声を区切って話す人間たちのその種族をも滅ぼすだろう、
81こめかみに白髪を生やした人間たちが生まれて来る時には。
82父は子と子は父と
83客は主人と友は友と一つにならず、
84兄弟もかつてのように親しくはないだろう。
85両親が年を取るとたちまち人々は敬わなくなるだろう、
86そしてひどい言葉をかけて罵るであろう、
87ひどい人達である、神々からの報いを知らぬ人達、彼等は
88年老いた両親に養育の恩を返そうとはしないであろう。
89彼等は腕力の正義を信じる人達である、そして互いの国を略奪するだろう、
90誓いを守る人正義の人良い人への誉れはなくなり、
91悪事を成す人や乱暴を成す人を尊重するであろう、
92正義と恥の心は腕力のうちにあることになるだろう、
93悪人はより善い人に不正な言葉を
94投げ掛けて傷つける、しかる後に偽りの誓いを立てるだろう。
95悪意に満ちた言葉を吐き、悪に喜び、うらやみはあらゆる悲惨な人々に
96付いてまわるだろう、恐ろしいものが。
97そして実にその時にはオリュンポスへ広い道のある大地から
98白い衣で美しい肌を覆って
99不死なるものたちの種族の中へと人間たちを残して行くだろう
00アイドースとネメシスは、そして悪しき苦悩が
01人間たちには残った、そして悪に対する守りはないであろう。

正義について(202-285)

02さて話を王たちに私は語ろう、ご自身も知を弁えられておられるが。
03以下のように鷹は多彩な首をした鶯に言った、
04実に高い雲の中を、爪で掴んで、運びながら、
05鶯は哀れげに、曲がった爪で貫かれて
06嘆いていた、さて小鳥に向かって鷹は威圧的に話しかけた、
07 「おかしな奴よ、何を叫んでいるのだ、今お前より遥かに強い者が掴んでいるのだ
08その私が、歌い手であろうともお前を連れて行くところにお前は行くのだ、
09食べ物にも、放してやることも、私が望めばしてやろう。
10より優れたものと対峙しようなんて望むものは愚か者だ、
11勝利ははぎ取られさらにはひどい恥辱まで受けるのだ。」
12 長い翼の飛ぶのが速い鷹はこう言った。
13ペルセースよ、お前はディーケーに耳を傾け、傲慢に加わってはならない、
14傲慢は凡人にとって悪いのだから、そればかりか優者も
15容易に耐えることが出来ない、様々な破滅に出会って
16傲慢によって打ちのめされる、しかし通るのにより善い別への
17正しき事どもへの道がある、正義は最後には傲慢に勝る、
18しかし愚かな者は酷い目にあって悟るのだ、
19すなわちホルコスは曲がった裁きにすかさず付き走り、
20混乱の騒ぎが、曲がった裁きによる断を下す賄賂を貪る男達が
21導くほうへディーケーが引きずられて行くときに。
22彼女は泣きながら町や人々の住むところへと付いて行く
23霧を纏い、災いを男達にもたらしながら
24彼女を追い払い正義を保持しない彼等に。
25 外国人にも同国人にも正しい裁きを下し
26正義を踏み外さぬ者たち、
27彼等のポリスは花咲き、そしてそのうちの人々は栄える、
28子供を育てるエイレーネーがその地にあり、彼等には
29苦しみもたらす戦争を雷鳴らすゼウスは消して割り当てはしない、
30正しい裁きの国の人の所ではリーモス(飢え)も
31アーテーも追ってこず、人々は祭りに熱中し実りを味わう。
32彼等に土地はたくさんの生活の糧をもたらす、山では樫の木が
33高い所にどんぐりを、中程に蜂蜜をもたらす
34毛に覆われた羊たちは羊毛をずっしりと垂らす。
35女達は夫に似た子供達を産み、
36良き物どもに絶える事なく栄え、船で
37海に出ることもない、穀物をもたらす耕地が実をもたらすからだ。
38 悪しき傲慢とひどい業に心を向ける者たちには、
39クロノスの子雷鳴らすゼウスが罰を割り当てる。
40しばしば町全体をもが一人の悪人ゆえに苦しむ、
41罪を犯し悪事を謀った者のゆえに。
42そうした人々には天から大きな災いをクロノスの子が下す、
43飢えと疫病を、そして人々は滅ぶのだ、
44女達は子供を産まず、家の数は減るが
45それはオリュンポスのクロノスの子の抜け目無さによってでだ、またある時には、
46彼等の幅広き軍勢を滅ぼし、城壁を壊し、
47彼等の船々に海上でクロノスの子は償いをさせる。
48 王たちよ、あなた方自身でも考えてみなされ
49この裁きを、なぜなら人間たちの間の近くに
50不死なる者たちはいて、曲がった裁きで
51神々からの報いに重きを置かずに互いを疲れ果てさせている者たちを見ている。
52というのは全てを養う地の上に三万の
53不死なるものたちがゼウスから死すべき人間たちの見張りとしているのだ、
54彼等は裁きと非道を監視する
55霧を纏ってここかしこと地上をうろついて
56さらに乙女のディーケーもいる、
57栄光ありオリュンポスに座を占める神々によって尊重される方が、
58そして彼女をないがしろにして損なうものがあれば、
59直ちにクロノスの子父なるゼウスのもとに座り
60人間たちの不正な心を告げるのである、
61民衆が王たちの悪事を償うために、彼等はわるだくみをし
62正しからざる言葉を述べてよそへと裁きをねじ曲げるのだから
63以上のことに用心しつつ賄賂を貪る王たちよ、判決の言葉を正しなさい、
64そして曲がった裁きをきっぱりと忘れなさい。
65他人に悪事をなすものは自分自身に悪事をなすのであり、
66悪巧みはたくらむ人にとってより悪いのである。
67すべてを見すべてを知るゼウスの目は、
68現在のこれらのことをも望むなら目にすることになる、それは
69この町で行われているこの裁きもまたいかなるものであるのかを見逃しはしない。
70こうした有様では私自身も私の息子も人々の間で正しい人でありたくない、
71悪人が正しいことになるのだから、
72もし不正な人が大きな正義を持つならば、
73だが知を弁えたるゼウスがそうしたことを成し遂げることは有り得ない、と望みたい
74 ペルセースよ、あなたはそれらのことをあなたの心に入れなさい、
75そうして今やディーケーに耳を傾け、暴力をすっかり忘れなさい。
76というのは次のような法を人間たちにクロノスの子は定めたのだから、
77魚や野獣や翼を持つ鳥は
78相互に食い合う、それらの間には正義がないからである、
79しかし人間たちに彼は、抜きんでて優れたものである正義を与えたのであった
80というのはもし人が正しい事どもを弁えて話そうとするならば
81その者に遠くを見るゼウスは幸福を与えるのである、
82しかし証人となる際にわざと偽証して
83嘘をつき、同時にディーケーを害し癒し難く傷つける者、
84その者の家系は後に不明となり、
85誓いに忠実なものの家系は後により栄える。

労働の貴さについて(286-319)

86 お前に私は善いことをおもんばかって話すのだ、実に愚かなペルセースよ。
87悪しき事を沢山手に入れるのは容易なことである
88それへの道は平らで、それはすぐ近くに住む、
89しかし不死の神々は徳の前に汗を置いた、
90しかもそれへの道は長く険しく
91初めはゴツゴツしている、しかし頂上に到着すると、
92後には容易になる、実に困難ではあったが。
93 最善な人間とは自分であらゆる事を考えるだろう、
94後の事どもやお終いまでをより善くあるようにと、
95だが善いことを言っている人に従う人もまた善い、
96だが自分で考えもせず他人から聞いても
97心に入れない人は、それに対して役に立たない男だ。
98だがお前が我々の命令を常に思い出して
99働くならば、高貴な生まれであるペルセースよ、リーモスがお前を憎むために
00そして美しい冠を付けた貴ばれるデーメーテールがお前を愛するために、
01そうすれば彼女は食料でお前の納屋を満たしてくれる。
02というのもリーモスは全くもって怠け者の随伴者なのである。
03怠けて生きる者全てに神々も人間たちも憤慨する、
04彼等は蜜蜂たちの努力の成果を働かずに食べて浪費する
05針のない雄バチたちに気質の点で似ている、
06だがお前は程よいところに仕事を整えることを好まねばならない、
07時々の食料で納屋が満たされるようにと。
08仕事から人々はたくさんの家畜を得て金持ちとなる、
09また働くことによって不死なるものどもにより一層愛される。
10お前は人々にも愛されるだろう、というのは彼等は怠け者をひどく嫌うから。
11仕事は決して不名誉ではなく、無精が不名誉なのである、
12だからもしお前が働けば、たちまちお金持ちになってお前を怠け者は
13羨ましがるだろう、徳と名声は富に付き従うのである、
14運命の点でお前がいかなる者であろうとも、働くことは寄り善いことだ、
15すなわちもしお前が他人の財産からばかげた考えを
16仕事に向け変えて生活の糧を気遣うならば、私がお前に忠告するように。
17善ではない方の恥は欠乏した人間の面倒を見る、
18恥は人間たちを大いに害するしまた利するのである、
19しかしもう一方の恥は不幸へ導き、大胆さは裕福へ導く。

繁栄の豊かさ(320-380)

20 お金は奪い取るものではない、神から与えられたものは遥かに善い。
21もし人が腕の力で大きな幸せを選んだとしたら、
22あるいは舌先三寸でそれを得たとしたら、それがどれ程多くになろうとも、
23利得は人間たちの心を易々と欺くであろう、
24アイドーがアナイデイエーを追い払う時には、
25簡単に彼を神々は抹殺し、その男の家を
26小さくする、そして富が彼にあるのも短時間である。
27そして等しく、嘆願者やよそ者にひどい仕打ちをする人、
28自分の兄弟の妻の寝床に上り
29密かに通じて、不倫をなす人、
30誰かの孤児に対して無知から罪を犯す人、
31追いの悪しき敷居の上にいる年老いた父と
32厳しい言葉を掛けて争う人には、
33そういった者にはゼウス自らが怒って、最後には
34不正なわざに対して苛酷な報いを課す。
35だがお前はそうした事どもを完全に高揚した心において遠ざけよ、
36そして力の限り不死なる神々に神聖なる犠牲を捧げ
37汚れなく清浄なし方で、輝く腿骨を燃やせ、
38また別の時には神酒によるささげの儀式で神をなだめよ、
39お前が寝床に入る時、神聖な光がやって来る時に、
40神々が恵みぶかい心を持たれますようにと、
41他人の土地を手に入れることがあっても、お前の土地を他人がと言う事が無いため。
42親しき人を食事に招き、敵は放っておきなさい、
43とりわけ呼ぶべきは、お前の近くに住む人、
44というのはもしお前の農園で何か厄介事が起ったら、
45隣人たちは帯も締めずに来るものだが、親類たちは帯を締めるのである。
46災いは悪しき隣人、良き限りのものは大いなる利、
47良き隣人を得る者は、良き運を得る者、
48牛は失われ得ないであろう、悪い隣人が居なかったなら。
49隣人から物を借りる時にはしっかりと測ってもらい、しっかりと測って返せ、
50同じ嵩だけ、出来るならばより一層多く、
51後に困った時に頼るべきものを見つけられるように。
52悪しき利益を得てはならない、悪しき利益は災いに等しいのである。
53愛してくる人を愛し、近寄ってくる人に近寄りなさい。
54そして与える人に与え、与えてくれない人には与えてはならない、
55与える者には与え、与えぬ者には与えないものである、
56ドースは善く、ハルパクスは悪く死の与え手である。
57進んで与える人は例え大きな物を与えたとしても、
58与えたものに喜びその心に満足する、
59恥の知らなさによって説得されて自ら取る人は、
60ほんの僅かであろうとも、それはその人の心を凍て付かせる。
61僅かなものの積み重ねが、
62しかも度々それを為せば、それは大きな物にもなろう。
63今ある物に重ねて蓄える人は、ひどい飢えを防ぐ、
64家の中に蓄えた物は人を悩まさない、
65家に置くのがより善い、外に置くと損なわれる。
66そこにあるものを取ることは善いが、不足する物を望む事は
67心にとっての災いである、それらの事をお前が気に掛けるよう私は命ずる。
68瓶の初めと終りにはたらふく使い、
69半ばでは節約せよ、残りすくなでの節約は惨めである。
70親しい人への約束された賃金はちゃんと払わねばならぬ、
71また兄弟に対しても笑いながらも証人を立てねばならぬ、
72信頼も不信も同様に人間達を滅ぼすものである。
73尻を飾る女がお前の心を欺かせぬようにせよ
74甘い言葉をささやいて、お前の納屋を横目で見つつ、
75女を信ずる人は、泥棒も信ずる。
76先祖伝来の家を守る息子は一人がよい、
77そうすれば家の富は増大するであろう、
78もうひとり別の子供を後に残すなら年老いてからお前は死んでもらいたい。
79容易に多くの者にゼウスは大きな幸せを与える、
80気を遣う仕事が多ければ多いだけ、収入の増加も多い。

農事暦(381-617)

81 お前の心がお前の心の内で富を望むならば、
82以下のようにせよ、仕事に仕事を重ねて働け。
83アトラスの子プレイアデースが昇る時に
84刈り取りを始め、沈む時に鍬入れを始めよ、
85これらの星は四十夜四十日間
86姿を隠し、

未完


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